食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。
消化・吸収されずに、小腸を通って大腸まで達する食品成分です。
便秘の予防をはじめとする整腸効果は有名ですが、それだけでなく血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、様々な効果があることが分かっています。
食物繊維が不足すると、腸内環境の悪化によって便秘になりやすくなります。その結果によって痔になったり、大腸癌や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まったりします。通常の食事では食物繊維の過剰摂取の心配はありません。ですが、現在の日本人は食物繊維が不足しがちであるため、意識して摂る必要があります。しかし、サプリメントなどの健康食品を使用する際は、飲み過ぎるとお腹が緩くなったり、血糖値のコントロールが上手にできずに低血糖になってしまったり、他の栄養素の吸収を妨げたりする可能性があるため注意が必要です。食物繊維には大きく水溶性と不溶性の2種類があります。
水溶性食物繊維には果物や野菜に含まれるペクチン、コンブやワカメなどのぬるぬるの成分のアルギン酸などがあります。水に溶けやすく溶けるとゼリー状になります。小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。また、コレステロールを吸着し体外に排出することで血中のコレステロール値も低下させます。さらに、ナトリウムを排出する効果もあるので、高血圧を予防する効果もあります。食物繊維は低カロリーで肥満の予防にもなるので、糖尿病、脂質異常症、高血圧、動脈硬化など、さまざまな生活習慣病の予防に効果があります。
不溶性食物繊維には、植物の細胞壁を構成しているセルロースやヘミセルロース、リグニンなどがあります。カニやエビの殻に含まれるキチンも不溶性食物繊維に分類されます。水分を吸収して便の容積を増やします。便が増えると、大腸が刺激され、排便がスムーズになります。また、有害物質を吸着させて、便と一緒に体の外に排出するため、腸を整えて大腸がんのリスクを減らしてくれます。ここで食物繊維の豊富な食品を下に示します。
可食部100gあたりの食物繊維含有量
こんにゃく 3.0g |
切り干し大根 21.3g |
大豆 おから 11.7g |
きくらげ 57.4g |
乾しいたけ 41.0g |
糸引き納豆 6.7g |
食物繊維は、野菜類、穀類、豆類、きのこ類、いも及びでん粉類に多く含まれています。食品の中には、水溶性と不溶性両方の食物繊維を含む食品もあります。特に納豆は水溶性食物繊維2.3g、不溶性食物繊維4.4gとバランスよく含まれている食品です。食物繊維は種類によって生理作用が違いますので、不溶性・水溶性のどちらか一方を摂取するのではなく、さまざまな食品を組み合わせて両方をバランスよく摂取することが大切です。